米国への食品輸出におけるHACCPと米国食品安全強化法の関係

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HACCP 販路開拓 食品経営

食品製造業者の皆様に必須となりつつあるHACCP。5月1日の当コラム「海外輸出を視野に入れたHACCPの導入」でも、海外への食品輸出に向けたHACCPの有用性につき解説したところですが、今回は重要市場である米国への輸出における、HACCPの活用について考えてみたいと思います。

米国向け食品輸出とは

要旨を述べてしまうと

  • HACCPは米国での食品販売にほぼ必須。
  • 輸出を考えているなら、HACCP作成段階で、米国で必要となる追加事項を盛り込んでおくべき

ということになります。

やはり国際的に通用するHACCPの認証を早めに得ておくに、如くはありません。

米国食品安全強化法(FSMA)とは?

米国食品安全強化法(FSMA:Food Safety Modernization Act)とはどういったものでしょうか?

  • 経緯と趣旨は?
    • 1997年からHACCPの衛生管理が水産物、ジュース加工・輸入、食肉及び食肉製品にて先行実施。
    • 2011年にFSMAが成立し、2016年9月から段階的に、米国内で消費される食品の製造・加工、包装、または保管を行う全施設(米国外も含む)においてHACCPの考え方を採り入れた措置の計画・実行が義務付け。
    • 米国内で流通する食品の安全徹底のための法律であり、国内生産に対象を絞っているわけではない。
    • バイオテロ、意図的な粗悪品製造も防止する目的あり。小企業のための移行期間が終了したため、全サプライヤーが準拠必要。

管轄は、U.S. Food and Drug Administration (FDA:食品・医薬品局)です。

  • 小企業でも適用されるのか?
    • YESです。

2019年3月に暫定移行期間が終わり、売上が小さい業者も対象となりました。一瓶、一缶でも、というのは極端ですが、継続取引を目するなら間違いなく適用です。

  • 供給者は、何の書類を揃えるべきか?
    • Food Safety Plan(食品安全計画)が必要です。FSMAでの規定ロジックは以下の通りです。
      • FSMAの主要な章としてPreventive Controls for Human Food(PCHF、食品の汚染の予防的コントロール)があり、
      • ⇒その下に、小項目として「Hazard Analysis and Risk-Based Preventive Controls for Human Food」(危害分析およびリスクに応じた予防管理 危害分析およびリスクに応じた予防管理)があり、
      • ⇒そこにFood Safety Plan 食品安全計画が必須とされています。定義は、”A set of written documents that is based upon food safety principles and incorporates hazard analysis, preventive controls, and delineates monitoring, corrective action, and verification procedures to be followed, including a recall plan.”となっており、「潜在被害の分析、予防措置、モニタリング、是正措置、検査」が含まれ、ほぼHACCPです。
    • FDAは分野毎ガイダンスを作成してきていますが、300ページを超えます。ドラフトガイドラインが未策定の食品分野もあり、FDAも以前、試行プロセス中なのが窺えます。

HACCPはどう役に立つのか

  • FDAから、事前に食品安全計画を承認してもらわないといけない?
    • いえ、実は前述の食品安全計画自体、FDAへの提出や承認は不要です。
  • ではなぜHACCPが必要なのか?
    • 輸入業者が、外国供給者の検証措置(Foreign Supplier Verification Programs: FSVP)を課されているからです。
    • 実はFSVP、チェック義務がかなり複雑なのですが、ここでは、ひとまず日本の輸出業者の立場に注目し筆を割きません。FDAのHPには以下の通りあります。
    • The FSVP rule requires that importers perform certain risk-based activities to verify that food imported into the United States has been produced in a manner that meets applicable U.S. safety standards. ~中略~ The FDA first proposed this rule in July 2013.
      • (仮訳)FSVPは、輸入者が、輸入食品が米国の安全基準に合致して生産されたかを、リスクに根差して検査することを課す…2013年7月から本規定を設けた。
  • 国内HACCPの認証が、米国輸出に必要なのか?
    • いえ、狭義で言えば、そのものは不要です。ただ、実際的には要ります。
    • FDAは食品安全計画の様式を指定していませんが、前述のFSVPで、輸入者が供給者の食糧安全計画を、責任を持って説明できる(accountable)ことが必須です。故に、輸入者は供給者の食品安全計画につき確証を持てなければならず、その為にHACCP認証が効果的です。直接的には英語でのHACCP作成は規定していませんが、日系商社経由でも、対外説明用に英語版の書類を求める可能性はあります。
  • 日本でのHACCPとの違い
    • 国内のHACCPは「工程」が主眼でまとめられますが、FSMAでは「衛生」「アレルゲン」「サプライチェーン(供給側)」も予防管理の独立項目として着目されます。また事故の際の「リコールプラン」も要します。
    • 日本と米国では、添加物、アレルゲン等が違うため、注意を要します。日本は28種類、米国は8種類(ただし「ナッツ」が広範囲に及びます))。
    • FSMAは、あくまでも「安全」の為なので、品質上の問題と整理できる毛髪・汚れ・昆虫片などは重要視されない可能性があります。

施設の査察の可能性

  • 本制度では、FDAへの施設データ登録が義務になっています。結果、FDA側から査察官が派遣された事例があります。もしもの際の通訳手配は覚悟しておく必要があります。
  • 連絡は、輸入御者経由、直接Eメールで、また日本の農水省から打診、といったチャネルがあるようです。

このように、海外輸出にあたっては諸外国の方が食品に対する厳しい規定を設けている場合があります。まずは国内でのHACCP導入を足掛かりにして「世界に誇れる日本食」を海外に輸出しませんか?

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