テレワーク関連助成金・補助金を比較

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新型コロナウイルスの影響を受けて、緊急とは言え「テレワーク」の推進をする中小企業は多くなってきました。

テレワークとは言わずもがな・・・会社に出勤せずとも自宅や任意の場所でインターネット環境を活用しながら会議などをすることができる仕組みです。

結果的に国が「7~8割」の人との接触を減らすという意味で、通勤電車での接触の機会や会議での密集した環境を避けて仕事ができるようになるため、今回のコロナウイルス対策にはもってこいというわけです。

とは言え、そういった環境を整えるのにはハード・ソフトでの設備投資が必要となってきます。これは中小企業にとっては重荷になりやく導入をためらう大きな要因と言えます。

今回はそれらを支援する「テレワーク助成3兄弟」と言える、「新型コロナウイルス感染症対策のためのテレワークコース(厚労省)」「事業継続緊急対策(テレワーク)助成金(東京都)」「IT導入補助金(経産省)」の特徴を比較してみようと思います。

新型コロナウイルス感染症対策のためのテレワークコース(厚労省)

厚生労働省では、新型コロナウイルスの対策として、2020年3月に「新型コロナウイルス感染症対策のためのテレワークコース」(以下、コロナ対策テレワーク助成金)を創設しました。これはコロナ対策での自宅での仕事などを推進する中小事業者が、それらに関連する機器や新たな就業規則を導入するにあたって、その費用の一部を国が負担するというものです。

厚労省には元々、「働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)」という助成金制度がありました。しかし、これは今回のコロナ対策には対応しておらず、時間外労働の改善などの働き方改革を推進することが付帯的に求められるため、有事において手の出しにくい助成金でした。

そこで、今回の緊急事態向けの別の助成金を要したということになります。

コロナ対策テレワーク助成金の内容は?

テレワーク導入にかかった費用の1/2で、1企業当たり上限は100万円までです。

対象となる費用は次の通りです。

 ・テレワーク用通信機器の導入・運用
 ・就業規則・労使協定等の作成・変更
 ・労務管理担当者に対する研修
 ・労働者に対する研修、周知・啓発
 ・外部専門家(社会保険労務士など)によるコンサルティング 等

この時に注意するのは、他に転用できるようなパソコン、タブレット、スマートフォンの購入費用は対象にならないことです。

これにはいくつかの費用を組み合わせてもかまいません。例えば、こんな利用シーンが考えられます。

通信機器:セキュリティ性の高い通信をするためのVPN機器=50万円
収録機器:高性能のマイク&スピーカー=50万円
就業規則:社外での労働を終業時間としてみなすための就業規則の策定の社労士への謝金=50万円
合計:50+50+50=150万円
補助:150÷2=75万円 (100万円以下)

対象となる事業者は?

労働者災害補償保険の適用中小企業事業主であり、事業期間中に助成対象のテレワークの取組みを行い、テレワークをする従業員が1人以上いることが条件です。ここでいう中小企業事業主とは

資本金または出資額常時雇用する労働者
小売業(飲食店含む)5000万円以下50人以下
サービス業5000万円以下100人以下
卸売業1億円以下100人以下
その他業種3億円以下300人以下

ちなみに、この時のテレワークの取組みには試行的に導入するテレワークも対象となります。

事業期間

今回は特例的なものですのであっという間に終わってしまいます。令和2年2月17日~5月31日とされております。事業期間とは採択されてからテレワークを導入する期間を指しますので、急がないといけないことがわかります。

応募方法

こちらは厚労省のホームページより引用(https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/000621644.pdf)。まずは、「働き方改革推進支援助成金交付申請書」を、テレワーク相談センターに提出します。このとき、事業実施計画書などの書類も必要になります。これらの書類は次のリンクからダウンロードできます。

https://www.tw-sodan.jp/index.html (テレワーク相談センター)

事業継続緊急対策(テレワーク)助成金(東京都)

東京都では別に、公益財団法人東京しごと財団の「事業継続緊急対策(テレワーク)助成金」(以下、テレワーク助成金)という助成金が存在します。

テレワーク助成金の内容は?

テレワーク導入にかかった費用の全額で、1企業あたりの上限額は250万円です。この額だけを見ると驚きですね・・・。

対象となる費用は次の通りです。

機器等の購入費(例:パソコン、タブレット、VPNルーター)
機器の設置・設定費 (例:VPNルーター等機器の設置・設定作業費)
保守委託等の業務委託料(例:機器の保守費用)
導入機器等の導入時運用サポート費 (例:導入機器等の操作説明マニュアル作成費)
機器のリース料(例:パソコン等リース料金)
クラウドサービス等ツール利用料(例:コミュニケーションツール使用料)

先ほどの厚労省のものと比べて、金額や助成率もさることながら、パソコンやタブレットなどのハードウェアも対象になっているところは助かります。

対象となる事業者は?

東京都の場合の対象事業者は次の通りです。

・常時雇用する労働者が2名以上999名以下で、都内に本社または事業所を置く中堅・中小企業等
・都が実施する「2020TDM推進プロジェクト」に参加していること

2020TDM推進プロジェクトはご存じない方もいらっしゃると思いますが、東京オリンピック・パラリンピックのときに、企業に交通混雑対策を打ち出してもらう取り組みです。詳細は以下のURLで確認できます。

https://2020tdm.tokyo/project/index.html (2020TDM推進PJサイト)

実施期間

東京都のものは、比較的長く見られており、支給決定日以後、令和2年6月30日までに完了する取組が対象です。申請締め切りは5月12日必着までとあり、予算が終わり次第早く切り上げることを示唆した内容が書かれていますが、4月15日の小池都知事の会見で8000億円の補正予算が組まれた中に、このテレワーク助成金の内容も含まれていましたので、今後この期間が延びたりする可能性はありますので、最新情報に注意してください。

応募方法

こちらは東京しごと財団のホームページから引用(https://www.shigotozaidan.or.jp/koyo-kankyo/boshu/kinkyutaisaku.html

申請書のフォーマットも上記のリンクから入手してください。また、7月31日までに「事業報告書」の送付を必要とするので要注意です。

IT導入補助金(経産省)

経済産業省では従前から、中小事業者のIT化を推進するべく「ソフトウェア」や「クラウドサービス」を中心にこの補助金を創設していました。今回、新型コロナウイルス対策のために「C類型」という特別枠を創設して、これまでのソフトウェアだけでなくテレワークを導入するために必要な「ハードウェア」も対象とした補助金に衣替えしました。

IT導入補助金(C類型)の内容は?

IT導入補助金の補助額は、テレワーク環境の整備やサプライチェーン毀損の対応、非対面型のビジネスモデルに対応する中小事業者に費用の補助率2/3、上限450万円(下限30万円)です。経産省の補助金はテレワークだけでなく、売上減少や生産に悪影響を与えているものに対して広くその復旧することを目的としています。

対象となる費用は

IT導入支援事業者によってあらかじめ登録されたツール
・ソフトウェア費
・導入関連費
・ハードウェアレンタル費
ただし、以下の期間にITを導入する事業者が自ら選定して導入したツールは事後的に支援事業者(ITベンダーなど)が登録すれば補助対象とする「遡及申請可能期間」というものを設けています。
『遡及申請可能期間』 2020年4月7日~5月10日

ちょっと複雑ですが、この補助金(2次公募)の公募は始まっていないのですが、補助金の申請が始まる前に購入を決定して導入してしまった費用でも、申請して採択されれば補助をするというものです。

また、IT導入補助金の場合はハードウェアは購入ではなくて「レンタル」であることに注意が必要です。

どんなツールが対象になるのか?

導入するツールは、次の3つの事業課題の解決のために機能するもののうち甲を必須として1つ以上を満たさなくてはいけません

甲:サプライチェーンへの毀損対応
 顧客への製品供給を継続するために必要なIT投資をする事業
乙:非対面型ビジネスモデルへの転換
 非対面、遠隔でサービスを提供するためのビジネスモデルへ転換するために必要なIT投資をする事業
丙:テレワーク環境の整備
 従業員がテレワークを実践できるような環境を整備するための IT投資をする事業
さらに、これらを導入するためのコンサルティングのような「役務」や効果的に機能を発揮するための「オプション」も対象になります。ハードウェアのレンタルは「役務」に分類されます。

IT導入補助金では、この特別枠以外に従来通りの生産性向上に資するツールも併せて導入することができます。通常、このC類型ではなく既存のA類型やB類型のツールを選択すると、補助率は1/2でAでは上限150万円未満、Bでは上限450万円までとなっていましたが、C類型のツールが全体の経費の1/6以上を占めていれば、補助率が2/3で上限が450万円となります。

【4月26日加筆】残念ながら、IT導入補助金の公募要領を見ると、A・B・Cいずれかの類型より1ツールを選ぶようです。昨年までのIT導入補助金では「複数ツールの組合せ」ができたのですが、どうやら今回は「こっそり」その一文が消えています。(少し、事務局に問い合わせをしてもし分かったことがあれば随時公開します)

よって、A類型とC類型の組み合わせでの申請といった形にすると、補助率2/3で上限が450万円となりますので、非常に効果が大きい申請の方法です。

対象となる事業者は?

業種・組織形態 資本金・出資額常用する従業員数
製造業、建設業、運輸業 3億円300人
卸売業 1億円 100人
サービス業(ソフトウエア業、情報処理サービス業、旅館業を除く) 5000万円 100人
小売業 5000万円50人
ゴム製品製造業(自動車又は航空機用タイヤ及びチューブ製造業並びに工業用ベルト製造業を除く) 3億円900人
ソフトウエア業又は情報処理サービス業 3億円300人
旅館業5000万円200人
その他の業種(上記以外)3億円300人
医療法人、社会福祉法人、学校法人300人
商工会・都道府県商工会連合会及び商工会議所100人
中小企業支援法第2条第1項第4号に規定される中小企業団体主たる業種に記載の従業員規模
特別の法律によって設立された組合またはその連合会主たる業種に記載の従業員規模
財団法人(一般・公益)、社団法人(一般・公益)主たる業種に記載の従業員規模
特定非営利活動法人主たる業種に記載の従業員規模

全て数字は「以下」です。

他の助成金に比べて、少々細かい範囲まで指定していますが幅広い業種が対応となっているのがわかります。

採択にあたっての条件は?

補助金は助成金と異なり、申請する事業に対して達成目標を設定しなくてはいけません。

・補助事業を実施することによる労働生産性の伸び率の向上について、1 年後の伸び率が 3 %以上、3 年後の伸び率が 9 %以上及びこれらと同等以上の、数値目標を作成すること。
・導入後3年間の事業期間で、給与支給総額を年率平均1.5 %以上増加すること。
・事業計画期間において、事業場内最低賃金(事業場内で最も低い賃金)を地域別最低賃金+ 30 円以上の水準にすること。
ただし、C類型で申請した事業者は上記の数値達成のカウントを1年繰り越すことが可能です。

なお、これら条件で達成ができなかった場合は補助金の全額もしくは一部を返還する場合があるので要注意です。そのためにも、中小企業診断士などのアドバイスを受けながら着実に達成目標をクリアできるような事業計画策定とフォローをすることが大事です。

実施期間

交付決定後から6か月間に申請したツールを導入します。交付申請は次の項で詳しく説明しますが、20年中であれば応募できますので、交付が決定は随時あるということです。

応募方法


こちらはIT導入補助金2020のホームページから引用(https://www.it-hojo.jp/

IT導入補助金の場合は「gBiz ID」を取得して、そのIDを使って電子申請をすることになります。まずはファーストステップとしてはgBiz IDプライムを取得することからです。必要な書類として「印鑑証明」が必要になりますので、事前に入手しておきましょう。(https://gbiz-id.go.jp/top/)

なお、申請期間は2020年5月上旬~12月までと随時受け付けるのが特徴です。

では、どの助成金・補助金がお得か

これまでの各種制度をテレワークに注目して一覧にすると次の通りです。

厚労省
テレワーク助成金
東京都
テレワーク助成金
IT導入補助金
助成金の内容 費用の半額、上限100万円 費用の全額、上限250万円 費用の2/3、上限450万円
対象費用 パソコン、タブレットの購入費は対象外 パソコン、タブレットの購入費も対象・パソコン、タブレットなどはレンタル
・テレワーク以外のツールも併用できる
対象となる中小企業・資本金5,000万~3億円以下
・労働者50~300人以下
・資本金ルールなし
・労働者2~999人
・本社または事業所が都内にある
・2020TDM推進プロジェクトに参加する
・幅広い事業者
・各種団体も対象
期間5月31日までにテレワークを導入しなければならない6月30日までにテレワークを導入しなければならない交付決定後、6か月以内にテレワークを導入しなければならない
申込締め切り5月29日5月12日5月上旬~12月末まで

これら制度は併用できないため、取り急ぎのテレワークツールの購入がある方で、東京都に事業所がある場合は東京都のテレワーク助成金をお勧めします。他のITツールも検討しながらテレワークも視野に入れる方は、IT導入補助金がお勧めです。一方で、ハードはレンタルというのが少しハードルが高いでしょうか?

テレワークは新型コロナ対策に有効か?

実は筆者は学生時代の専攻は「理学部生物学科」でした。大学が医学系の大学だったせいか、医療系の話が多くそういった中でも「疫学」「衛生学」といったことも多分に学びました。

コロナウイルスやインフルエンザウイルスは、細菌などと違って薄い膜とDNAやRNAだけでできた非常に小さく弱い生き物とも言えないものです。これらは人間の粘膜や細胞に寄生して、ヒトの細胞分裂をする仕組みを乗っ取って自分たちも増えようとします。

ですので、ウイルスは人と人が接触するようなタイミングでなければそう簡単に他人に寄生することはできないのです。ですから、接触の機会が多いほど「ねずみ算式」に感染者は増えていきます。これを食い止めるには「接触機会を避けること」が非常に重要になってくるわけですね。

そのためにも「満員電車」や「会議室」といったいわゆる「三密」状態を回避することができるテレワークは新型コロナウイルスの問題を早期に終わらせることができる解決策と言えます。

もちろん、導入すればテレワーク本来の得意技である働き方改革につながりますし、ライフワークバランスの推進にもつながり心の健康にも寄与しますので、今の段階で導入して損はないと言えるでしょう。

詳しい内容は専門家へお問い合わせを

はじまりビジネスパートナーズでは、中小企業診断士の他にも、ITコーディネーターなどのテレワーク導入に詳しいコンサルタントや効果的なITツールを有する協力ベンダーがおります。一度、ご相談をください。

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