コロナ対策で変わる2020年ものづくり補助金のポイント(2)

補助金・助成金
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さて、前回はものづくり補助金の基本のおさらいについて投稿をしました。

引き続き、今回はもう少し深く・詳細にコロナ対策での変更点やどんな要素が重要かを解説したいと思います。

コロナ対策で変わった点

大きく、今回の対策で変わったことといえば「事前に設備投資の準備に着手してもよい点」と「コロナ対応の特別枠」ができた点です。

事前着手申請について

前回の投稿でも説明した通り、本来は補助金の採択結果が出る前にその設備投資をした場合は、もし採択されたとしても補助金は交付されませんでした。

しかし、もしそうなると、、、今コロナの問題で苦しんでいる事業者が、今すぐにでも新たな設備投資をしてビジネスモデルの転換をしなくてはいけないときに、「申請→採択」までの2か月間を待ち、「発注→納品→中小企業中央団体による監査→テスト生産→監査→本生産」というプロセスの数か月という時間を待っていては、その間に機会を逸してしまい最悪の場合は倒産をしてしまうかもしれません。

そこで、今回に限ってはコロナウイルスの影響で早期に着手しなくてはいけない事業者向けに「事前着手のための承認申請書」という書類を提出および承認を受ければ事前に設備の設置の準備をしてもよいことになりました。

  

記入するべきことは例えば次の通りです。

1.会社概要
ホームページのURL、新型コロナウイルスの影響を受けている事業の概要
(例)当社は創業50年の和食レストランを経営している。立地は都内の観光地にほど近く、ここ数年はインバウンドの影響や国内の旅行雑誌に取り上げられるなど、国内外の観光客によって売上を伸ばしてきた。しかし、今般のコロナウイルスの影響によって海外の観光客は激減、追い打ちをかけるように緊急事態宣言の発出により国内観光客はおろか、これまでベースであった近隣のオフィス客の売上も激減してして、直近では前年同月比10%の売上である。現状の資金繰りの悪化に対応して借入などをしているが、この状況や宣言終了後の情勢がわからず、現状のビジネスモデルの将来性は見えないうえに、このまま雇用を維持できるかが懐疑的な状況である。 (本文:297文字/300文字)

具体的に、どういった顧客や売上が減ってしまい、どれだけ現状で大変な実績になっているかが伝わるような記入をこころがけましょう。(本当に困っているのですから、その窮状を素直に書くといいと思います。)

2.今回申請する事業計画の概要
特別枠(後述)に考えている事業の概要、導入する設備等、設備の内容。
(例)現状を打開するために当社では非対面型のビジネスモデルの構築として、〇〇事業を展開しようと考えている。〇〇とは現状の和食レストランで提供している料理や定食を来店客だけに提供するのではなく、これまで当社に来店経験のある地方などの国内観光客に対して、改めて当社の商品を自宅に居ながら味わってもらうためのものであり、この事業の達成で、減少した売上の回復を見込み、損益分岐点を超えることを目指している。この事業の達成には、〇〇をする〇〇や〇〇するための〇〇の設備投資を検討しており、これにより、〇〇を改善することになり、新たなサービスの提供方法ができるようになる。総額は概算で1500万円を見込んでいる。(本文:294文字/300文字)

今回の場合「特別枠」と言われる対応に則しているかどうかが事前申請のポイントになってくると思われます。特別枠のパターンは次の項目で説明しますが、上記の事例で言えば「非対面型のビジネスモデルへの転換」というところがポイントです。

続いては、「特別枠」の類型に対して、どのような対応方針かを「客観的」「定量的」に述べるものですので、実際にこの後申請する申請書に入れる数字を一部抜粋して入力をしていきます。

3.感染症の事業活動への影響

①(  )サプライチェーンの毀損(部品調達・製品出荷に支障が出ている、海外拠点を閉鎖した等)
②( 〇 )対面サービスの継続困難(顧客が大幅に減少した等)
③(  )従業員の通勤困難(社員が感染した等)
④(  ) その他[     ]

新型コロナウイルスの事業活動への影響経路とその対応方針について、具体的に記述して下さい。
(例)当社は先にも述べた通り一般顧客を相手にしたレストランである。そのため、通常の収益の流れは「一般消費者(国内外観光客、オフィス客)→当社」という流れである。売上は現金及びキャッシュレス決済であり、即払いか2か月後入金である。そのため、客数減がそのまま売上減や資金繰りの悪化につながる事業である。さらには、買掛金の支払いが4月末であり、その時点で大幅な運転資金の悪化が想定される。当面の運転資金に対してはセーフティネット4号の借入で4000万円が完了し対応をするが、減少した観光客の売上が40%(年商10億円)を占めており、この改善を早期に行わない場合、固定費(3500万円/月)の流出が続いてしまうため、新たなサービスの提供方法の導入を急ぎ、そのあとの資金繰りの改善や雇用の維持に努める方針である。(339文字)

ここに文字数制限はありませんが、審査をする事務局は日頃から「客観的」「定量的」にみて実現可能かどうか?という判断基準があるので、ここはしっかりと入れ込んでこの事業を達成させる意気込みを入れ込みましょう。(もしかしたら、いつも通りの審査をされてしまうかもしれません。)

4.事業開始が遅れた場合に生じ得る影響

①(  )生産活動や取引に支障が出て、製品供給を停止せざるを得ない
②( 〇 )従来通りの対面型ビジネスモデルではサービス提供を停止せざるを得ない
③(  )従業員がテレワークできずに事業を継続できない
④(  )その他[      ]
という状況が発生し、[5] 億円程度(他社も含めれば[5.6] 億円程度) の多大な損失が発生する。

【具体的説明】
 ※事前着手が承認されず、2.の事業計画に沿った投資が遅れてしまった場合に、どのような損失が発生するのかを具体的に記述して下さい。その損失額の算出根拠を詳しく記載して下さい。

(例)4月期の売上の着地見込みは前年同月比5%。当社の運転資金は固定費(人件費含む)3500万円+原材料費3500万円=7000万円/月である。借入の運転資金が潰えた場合は、自己資金とも合わせても6月には資金ショートする恐れがある。この場合、昨年の6月の売上が1億円、これまで(1~4月)の累計売上が2億円で前年比20%あるため1.6億円、合計2.6億円の損失を抱えることになる。既往債務も含めて1.4億円の負債が返済できないことから、合計5億円の損失が発生する。さらに、買掛金が2か月分で約0.6億円残ることから、合計で5.6億円程度の損失となる。

という形で、負債も含めてもし倒産してしまった場合の損失額を記入します。

出せば必ずしも承認するわけでないらしい・・・

事業者さんが大変な時に「次の一手」をすぐにでも打ちたいところでこの承認申請を出すのですが、残念ながら必ずしも提出すれば承認されるとは限らない旨が公募要領にも書いてあります。提出して承認されなかった場合のリスクはやはり「新事業を展開できずに倒産するリスク」です。

ですので、万が一に備えてですが、今回の新型コロナの緊急融資の各制度を利用して設備投資資金もしっかりと借入をしておくことをお勧めします(ただし、補助金と同じくしっかりとした事業計画書を立てましょう)

また、これは日頃から事業者さんと向き合っているからこそ切に思いますが、審査する事務局も「紋切型」で「この書き方がなっていない」「これは様式と違う」「これは損失額に数えない」・・・などとして「承認しない」ということをしてほしくないということです。

今まさに私の診ている食品・飲食事業者さんは「生きるか死ぬか」の瀬戸際に立っています。もしかしたらつたない文章かもしれませんが、日々の資金繰りに追われている今、その切羽詰まった時間を割いて何とか作った申請書なんです。中小企業に何とか生き残ってもらって、この危機的状況から抜け出すための「緊急経済対策」とは何かという大局に立った審査をお願いしたいですね。

ちなみに、この後説明する特別枠を使う事業者の中で、事前に設備を導入する必要のない事業者の方はこの申請は必要ありませんのでご安心ください。

コロナ対応の特別枠とは?

コロナ対策の特別枠とは具体的にどのような対応をした場合でしょうか?下記を確認してみましょう。

A:サプライチェーンの毀損への対応
顧客への製品供給を継続するために必要な設備投資や製品開発を行うこと
(例:部品調達困難による部品内製化、出荷先営業停止に伴う新規顧客開拓)
B:非対面型ビジネスモデルへの転換
非対面・遠隔でサービス提供するためのビジネスモデルへ転換するための設備・
システム投資を行うこと
(例:店舗販売からEC販売へのシフト、VR・オンラインによるサービス提供)
C:テレワーク環境の整備
従業員がテレワークを実践できるような環境を整備すること
(例:WEB会議システム、PC等を含むシンクライアントシステムの導入)

上記の3つのうち1つ以上の対策が、すべての設備投資(事業費)に占める1/6以上であれば特別枠に対応します。

では、特別枠を活用するとどういった違いが出るかというと、

補助率中小企業1/2 → 2/3
(小規模事業者は同じ)
補助対象経費           広告宣伝費・販売促進費を加えてもいい    

となり、中小企業は補助率が上がり、ものづくり補助金では認められなかった「広告宣伝費」や「販売促進費」も対応になるので、ECへの対応やそれを進めるための宣伝費などで非対面型ビジネスモデルを後押しすることになります。

また、特別枠で申請したものは次のような審査をするともあります。

特別枠の要件を満たす申請は、特別枠で不採択の場合、通常枠で加点の上、再審査されます。したがって、条件を満たす場合は、特別枠でご申請ください。ただし、特別枠の申請が通常枠で採択された場合や特別枠の要件を満たしていないことが発覚した場合等は、通常枠の補助率等が適用されますので、ご注意ください。

つまり、特別枠で申請したものの残念ながら採択されなかった場合でも、通常枠に回されて「特別枠加点」が施されたうえで審査がされるので、他の申請に比べて幾分有利になるかもしれないということです。

ですので、まずはご自分が考えている事業は「特別枠に当たるかどうか?」をよく考えたうえで、もし当てはまるようならばまずは特別枠で提出されることをお勧めします。

特別枠の審査基準は?

特別枠を審査する上での中身としては募集要領に次のように記載されています。

〔政策面〕
④ 新型コロナウイルスが事業環境に与える影響を乗り越えて V 字回復を達成するために有効な投資内容となっているか。[特別枠のみ]

この「V字回復」がキーになりそうですね。ですので、特別枠を利用する場合には、3つの類型のうちどれかを利用することで、客観的に見てもどん底から這い上がるような事業計画をしっかりと作りこめているか?ということが大事になりそうです。

そのためにも、例えば次のような事業になっているかが大事になりそうです。

サプライチェーンの毀損への対応(例)従来の得意先が営業自粛となり、主力としていた実演販売が難しくなり売上が減少した。そのため新規の取引先を開拓し、BtoCを強化する対策として、Webセミナー形式での実演販売を展開する。
非対面型ビジネスモデルへの転換(例)従来は店頭にて生産した食品を販売するいわゆる製造小売り業態であったが、緊急事態宣言で売り上げが減少した。そのため、各支店ともに宅配サービスを強化するために受注システムの構築をする。
テレワーク環境の整備(例)これまではBtoBのため、納品伝票や請求書業務を事務所で行う必要があり、子持ちの従業員が在宅での勤務となってしまい受注を受けきることができなくなった。そのため、在宅でも諸業務をノートパソコンでも使えるようにするため、シンクライアントシステムを導入して、機会損失を失くす。

というような事業を想定するといいかと思います。なかなか、こういった事態でいいアイデアが働かないところだと思いますので、こういったことも質問をいただいて、何かのお役に立てればと思います。

1次公募で採択になったが、改めて特別枠で公募はできるのか?

特別枠になると、補助率や使う用途が広がるだけに、もし1次公募採択されている事業者の中でも本当はこういった制度を活用したかったかもいらっしゃると思います。

その場合にはまず、1次公募の採択を「辞退」してもらい、特別枠で申請のし直しも可能です。

2次公募の採択の発表は?

採択の発表がいつかによって「我慢はいつまですればいいのか?」気になるところですね。

採択の発表は6月末目途を予定しているということで、迅速に対応をしてもらえそうです。

未来を見据えた対応を

非常に厳しい環境の今、今回の緊急経済対策は次のような意味を込めていると思います。

ものづくり補助金の利用はコロナ禍後の対策

先日の資金繰りセミナーでは今回の諸政策を次のように分類させてもらいました。

テーマ政策具体策
資金繰りを改善する特別融資・給付金セーフティネット4・5号 持続化給付金
雇用を守る助成金雇用調整助成金
将来払うお金を減らす税制固定資産税減免 ⽋損⾦の繰戻還付
コロナ禍後に備える補助金ものづくり補助金 小規模事業者持続化補助金 IT導入補助金

これは上から順に時間軸として急ぐものです。経営は当然「今」を何とかすることが大事なのと同時に、その今の問題を解決した次の一手を打つ絵を描けているかどうかが経営者には求められます。

ですので、実現可能で、しっかりと会社がまた成長できるような事業計画を策定して、国の様々な政策を受けられるような状況を作っておくことが大事ですね。

次回は、ものづくり補助金の申請書について説明をさせていただきます。

補助金申請の事業計画の策定とフォローはプロにお任せください

はじまりビジネスパートナーズは、食品事業者の生産管理の改善を支援する取組みを日頃より行っています。ものづくり補助金の申請においても、他のコンサル会社と異なり「事業者様が面倒になるくらい」現場に入ったり、繰り返しのヒアリングをして、徹底的に生産上の課題を洗い出します。

また、作った事業計画の責任もありますので、採択後のフォローもしっかりとさせていただけるような長期的なお付き合いのできる事業者様の効率的な設備投資をお手伝いしたいと思っています。

専用の分析シートで賃上げの経営に与える影響やマーケティングリサーチもすることで、「補助金策定でここまでの事業計画をつくるのか?」と驚かれることが多いです。ぜひ一度、相談だけでもいかがでしょうか?

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